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人民兵のトラブルノート

〜女詐欺師は自分も騙す〜




不思議な仕事を見つけました・・・

これは人民兵がまだ若かったときのころの話である。

いつもながらプロレタリアの人民兵は、バイトを転々として学費を稼ぎながら、日々をつつましく生きていた。 ある日のこと、いつものようにコンビニで立ち読みしていると妙な求人広告が目に入った。
出張ホスト募集 寂しがりやの女性会員をあなたの優しさで満たしてあげてください  高収入確実 年齢外見不問 電話 06−333−3333」

何をするのかよくわからなかったが、とりあえず電話を掛けてみることにした。 電話に出た若い男性と数分会話をしたあと、早速面接の約束を取り付けた。



田岡真由美(仮名)について・・・

*女タコ社長田岡真由美(仮名)の図 最近絵がうまくなったので10分ほどで描けちゃいました
うちは可哀想な身の上なんよ
指定された場所は大阪、十三にあるマンションの一室。
淀川の河川敷にほど近い府立北野高校のすぐ裏手にあった。
チャイムを鳴らすと、30台くらいの冴えない風体の男性が中に案内してくれた。

「事務所」とは名ばかりの2LDKほどの部屋に、タバコの煙がもうもうと立ち込め、 数人の男とタコ顔の女性が座っており、足の踏み場もないような状態だった。
冴えない男は、タコ顔の女性を私に紹介した。彼女は「田岡真由美」と名乗り、ここの社長をしていると言った。

早速面接が始まった。やけに落ち着いた男が担当した。あまり慣れていないのか、 何度か口篭もったあと彼が言ったのは以下のようなことだった。

  • 社長は交友範囲が広く政財界にも顔がきくこと
  • 社長の友人知人の女性が会員として多数在籍していること
  • 出会いの機会に乏しい女性会員をあなたの優しさで包んであげてほしいということ
  • 基本的に2時間のデートで女性から1万円が直接あなたに支払われること
  • 頑張り次第で十万単位でチップをはずむ人も多いということ
  • 女性が外泊を希望した場合、最低の料金は3万円となっていること
少し気になったので、60過ぎのお婆ちゃんとかに外泊を誘われた場合の拒否権について尋ねたところ、
意外にもそれは認められているという。

「どんな方が女性会員なんですか?」という私の問いに
「いろんな方がいますよ、森本さんはどんな人が好みですか?」と逆に聞かれた。

「中山美穂みたいな二十代の女性がいいですね」というと、彼は当然のように
「ええ、そんな方もいますね」と言い切った。

これは絶対に入会しなければいけない。ただ残念なことに、 女性会員から事務所にお金を一切もらっていないので、男性には入会金として8万円徴収しているという。

そんなお金はどの袖を振っても出てくるわけがなくて、諦めようと思ってさんざん悩んだ挙句、
「すいません、今手元に一万円しかないんですけど、これでひとまず仮入会ということにさせてもらって、 仕事でお金をもらってから残りを払うというのはどうですか?」と言ってみた。
「ええ、それでいいですよ」
(ええのんかい!!!!!!)と思ったが、こんなラッキーな話はない。

中山美穂とデートして1万円も貰えるなんて、そうざらに転がっているわけがない。
喜んで1万円払って、意気揚揚と事務所を後にした。 

男は親切にも「じゃあ、仕事が入りしだい優先的に連絡しますから」といってくれた。

ところが、一週間経っても二週間経ってもその事務所から電話がかかってくることはなかった。

と、ここまでならよくあるおとぎ話だ。



手袋から一億円

待てど暮らせど連絡がないので、しびれを切らしこちらから電話を掛けてみた。
すると女タコ社長が受話器を取った。仕事はないですかと尋ねたところ、今日の夜に一件あるので調度誰か探していたところだと言った。 20代後半の飯島直子似の女性が晩御飯をいっしょに食べてくれる人を探しているらしい。

飯島直子は趣味ではなかったが、一万円もらえるのに贅沢は言っていられない

愛車のカブにとび乗って夕方の6時ごろの例の事務所に着いた。
事務所は相変わらずの喧騒で、人とタバコの海でごった返していた。
私の姿を見た女タコ社長は横柄に「おはようさん」と言った。

そして社長は、飯島直子似の女性からもうすぐ電話があるからそのへんで寛いでおくようにいってくれた。
さらに彼女はそこいらにいた男に、
「この子(つまり人民兵)に手袋作ったって」と言った。

何故かわからないままに、手形を紙にとって名前を書き込んだ。
どういうことか尋ねてみると、サイドビジネスとして日本初のゴルフグローブのオーダーメイドを始めたのだという。
「ほんまは一万円するんやけど、うちに来てくれた子にはただでプレゼントしてんねん」ということらしい。
ただで貰えるなら悪い話ではない。

詳しく聞くと、1万円のグローブが月に一万セット売れてかなり儲かっていると、
女タコ社長は満面の笑みで教えてくれた。そのほかにも、 宮崎にあるリゾートホテルから毎月一億円の利益があがっていると言ってパンフレットを見せてくれて
「あんた学生やろ? 学費払えてるんか? 困ったことあったらなんでも言うてや」
とこちらを気遣ってくれた。

「うちはな、あんまり株とか信用せえへんねん。
せやから現金はそこの押し入れの中にある金庫にいつでも2000万くらいは入れとくの。
それやったら多少なにが起こっても安心やろ?」
とかなりスケールの大きい話を聞かせてくれた。
周りの人間もうんうんと肯いている。

当時の人民兵は貧しかったが、人様にお金を借りたり、恵んでもらうほどではなかったので、
「ご親切にどうも、今は大丈夫です」と言っておいた。

型紙を取り終えてから、そこらに転がっていた漫画本を読み始めた。
ところが9時を回っても10時を回っても、電話が鳴る気配は一向にない
二時間おきくらいに、女タコ社長がもうすぐだからと言ってくれるのが唯一の慰めだった。

時計の針が12時を回ってから勇気を出して
「すいません、今日は帰ります」と言ったところ、
「あ、そう お疲れさん」とあっさり言われてしまった。

よく分からないが、飯島直子の都合が悪くなったんだろうと解釈してその日は退散した。

その後3日待ってみたが、何の連絡もないので再びこちらから電話を掛けてみると、
意外にも仕事があるという。30代の浅野温子似の会員から今しがた連絡があったらしい。
浅野温子はあまり好きではなかったが、贅沢は言っていられない
愛車のカブに飛び乗って事務所に急いだ。

部屋に入ると、いつもより人が少ないのが気になった。
「仕事もうすぐあげるから、その辺で待っといて」と馴染みの台詞を聞いてから、本を読み始めた。
ところがその日は読書するどころではなかった。

事務所にひっきりなしに電話がかかってきて、その度に女タコ社長が受話器に大声で怒鳴りつける。
「おい、こら お前どこのもんじゃ、 代紋なのらんかい!! ダイモン!!
「おら、お前らヤクザやろが!! うちはな、そんなもん なんも怖ないんじゃ!!」
「おい、出てこんかい!! (ガチャ) 切りよったな こら!!」

何時間も続く無言電話にさすがの女タコ社長も疲れてきたようだ。

遠くで怒鳴っている声を聞きながら、側にいた小柄な男に話かけてみた。
その男のいうところによると、「出張ホスト」というのはその筋の人間がいわゆるシノギとしてやっているもので、
高い入会金を巻き上げるだけの小遣い稼ぎだという。


ちゃんとした商売をしているのはうちの事務所だけだとその男は言った。
とにかく、新参者のこの会社に、島を荒らされた同業者が妨害を始め、
昨日は社長の留守に事務所まで怒鳴り込んできて二人ほどどこかに連れ去られたようだ。

今日も昼過ぎからずっと嫌がらせの電話が続いているという。
5時間ほど騒音に耐え、時計が12時を回ってから
「すいません、今日は帰ります」と伝えると、
「あ、そう。 お疲れさん」とまたやけにあっさりと帰された。

私は家までの道のりでずっと考えていた。
「もしかして、浅野温子からもうすぐ電話がかかってくるかもしれない。
そうしたら、彼女と飯を食べにいく人間が必要なはず。 それなのに、どうしてあんなにあっさりと俺を帰したんだろう?」

考えても考えても分からなかった。
ただ、一つ分かったことは、私があの事務所に行くことを楽しみ始めたということだ。

それから、私は週に2〜3回の割りでその事務所に出かけ、
その都度約束された仕事を待ちつづけ、大抵は深夜に、そして時には朝方まで待って家に帰った。
仕事などあるはずも無かったが、私はそこに通いつづけた。

そして数週間のうちに、あれだけ混雑していた事務所に顔を出すのは私だけになってしまった。




家出少年白書

ある時、事務所に行くと16〜7歳と思われる不良少年が二人ほど働いていた。
驚いて社長に問いただすと、家出してきた少年を月に100万円の給料で雇いはじめたらしい。
私はそれを聞いてかなり羨ましく思った。「月に100万ももらえるなんて!」

口の利き方は知らないまでも、彼らは電話の応対をしたり、掃除や買い物を頼まれたり、 それなりに仕事をこなしていた。



売春斡旋

その翌日から女社長は彼らの機動力を使って新しい商売を始めた。
出張マッサージ、というか早い話が売春の斡旋である。

手書きの汚いビラをローソンで大量にコピーして近所のマンションに投函し始めた。
時給2000円で雇われた何人かの男も手伝い、事務所は再び活気を取り戻した。
ただ、私は「ホスト」なのでビラまきにも印刷にも全く関与しなかった。

世の中というのは恐ろしいもので、そんな適当なビラにも反応があった。
次の日のこと、事務所の電話がなった。

何せ初めてのことなので、家出少年も戸惑いがちだ。
「え? ああ? はい女の子ですか?」 (横目でちらりと社長の方を見る)
社長(うなずく)
「あ、はい、いてますよ」(困ったような顔で社長を見る)
社長(好みを聞くように指示)
「あ、えーと、あの、どういった女の子がお好みですか? え? 若いの?」(横目で社長を見る)
社長(18歳の工藤静香似の女の子がいると言うように指示)
「あ、ああ、えーと18歳の工藤静香そっくりの子がいますけど それでいいですか?」(社長を見る)
社長(十三のラブホテルに一人でチェックインするようにと指示)
「あ、じゃあ どこか十三のホテルに入って部屋から電話もらえますか? あの、確認したらすぐ女の子遣りますんで」 (ガチャ)

かなりいっぱいいっぱいのやり取りの後、家出少年が受話器を置いたときに、 緊張から解放された一同はほっとため息を漏らした。
しかし、私だけが違和感を感じていた。
何せここにいる女性はオバQを下膨れにしたような女タコ社長一人だ。

18歳でもなければ工藤静香でもない。いったいどうするつもりだろう? 
社長の友人である女性会員にでも頼むんだろうか? 
考えても分からなかったが、まわりの雰囲気はいたって明るく、私だけが不安にさいなまれているようだった。

世の中というのは本当に不思議なもので、30分ほどして先ほどの男性から電話があった。
一旦電話を切って彼の指定したホテルのフロントに電話を掛けてみると、 確かに男性が一人でその部屋にチェックインしたばかりだという。

家出少年は、女タコ社長の指示どうり男性に電話を掛けなおして、
「10分ほどで静香ちゃんが行きますんで」といって電話を切った。

さて、静香ちゃんをどうするのか興味深々で女タコ社長の方を向くと、
タコ社長は信じられないことを口にした。

「もりもっちゃん、あんた今からテレクラ行って女の子引っ掛けてきてくれへん?」
そして、細かいのがないと言って家出少年に2000円借りて私に渡すと「よろしく」言いのこして昼寝を始めた。



家出少女白書

テレクラで誰も引っかからず(当たり前だ)そのまま何も報告せず家に帰ったので、
気がひけて事務所に何日か顔を出さなかった。 

久々に行ってみると、驚いたことに高校生くらいの不良少女が3人ほどタムロしていた。
聞くところによると、3人とも家出をしているらしく、街で知り合った家出少年がここに連れてきたらしい。

女タコ社長は彼女らを使って早速商売をはじめた。

例のビラに殆ど反応がなかったのか、彼女は自らテレクラに電話して、 友達の女の子が金に困っているからといって1時間で3万円だと交渉を始めた。 手馴れたもので、1時間のうちに彼女ら全員の仕事が決まっていた。
そして、女タコ社長は「仕事」から戻ってきた女の子から斡旋料として1万5千円を徴収した。
その後、家出少女達は自分で電話して仕事にいくようになったが、女タコ社長はマージンをとり続けた。
その頃に私はちゃんとした仕事を見つけたので、それ以来あまり事務所に行かなくなった。


吉本事件

今考えても甚だおかしな話なのだが、私はまだその頃になっても女タコ社長、田岡真由美のことを疑わないでいた。
幸か不幸か、私は人生でまわりに自分の言葉にある程度の責任を持つ人間しか見てこなかったからかもしれない。

だから、月に1万セット売れるゴルフグローブの事務所の電話が殆ど鳴らないことも、
たくさんいるはずの女性会員からの連絡が一切ないことも、
金庫に2000万入っている筈なのに、家出少年に「細かい」お金をいつも出させていることも、

おかしいとは思いつつも見逃していた。

田岡真由美の話のどこか一パーセントでも本当なのだろうと信じ続けた。

その大きな原因は田岡の過剰なまでの自信だったと思う。
彼女は自分の言葉がどれだけ矛盾してようが、根拠を欠いていようが、それを声高に叫びつづけた。
その確信に満ちた目をみているうちに、「もう少しだけこの人を信用してみよう」という気にさせられるのである。

こんなことがあった。夏も近づいたある日、女タコ社長がみんなに、近々自分の誕生日があるからパーティを開くと宣言した。
言葉を言い終わるか終わらないかのうちに、彼女は受話器をとり、104番で吉本興業の番号を聞き出した

何をするつもりかとみんなが注目する中、女タコ社長はタレントの派遣を依頼し始めた。
「もしもし? 今度うちのバースデーパーティーするんやけど、芸人さんよぼうかなと思って。 え? ああ、お金とかうちは一切気にせえへんから。 お金はナンボでもあるんよ」
あまりの横柄さに、向こうは偉いさんに電話を繋いだようだ。

「え? 誰がいいかて? うちがすきなんはね。 さんま
え? さんまはあかんの? じゃ、ダウンタウンは?
「え? 東京に行ってる人はあかんの・・・ じゃ、誰がこれんの? 阪神巨人? それでええわ。  日にち決まったらまた連絡するわ、 じゃ」

そう言って受話器を一方的に置くと、嵐のような電話は終わった。
私を含め周囲の人間は「さすが社長 スケールが違う」と感心したものだった。

そんな場面を何度か見せられていたからかもしれない。
とにかく、私は女タコ社長、田岡真由美を最後のラインで信じていた。



レンタカー事件

ある日のこと、女タコ社長から家に電話があった。
向こうから連絡してくることは珍しかったので、なにかと思うと運転手の依頼だった。
「時給2000円出すからちょっと運転してくれへんかな」ということだったので、久しぶりに事務所に行ってみた。

事務所はとくに何も変わらず、家出少年と家出少女がタムロしているだけだった。
驚いたのは、女タコ社長が手に1万円札をヒラつかせて、
「これで車借りてきて」と言ったことだった。

彼女が現金を持っているのを見たのはそれが始めてだった。

運転はしばらくしていなかったが、レンタカーだったら保険も心配ないし、 断る理由もなかったのでトヨタレンタリースのお店でセダンを借りてきた。
3〜4時間くらい女タコ社長と家出少年達をあちこち連れていってあげて、事務所に戻ってくると彼女は横柄に
「お疲れさん。今日はもう帰ってもええよ」とだけ言って中に入っていった。

「金わい!!」などと思うはずもなく私は普通に家に帰った。
帰り際に社長は「車は今日の夜までに返しとくから」と約束してくれた。

ところが、一週間後にトヨタレンタカーから電話があった
車が戻っていないというのだ。延滞がついて請求額は7万円ほどになっていた。

慌てて事務所に電話すると、「今日かえすから」と平然と言われた。
納得できなかったので、事務所に足を運んだ。

猛然と抗議すると、タコ社長はごめんねとこちらが拍子抜けするほど平然と謝った。
そしてその直後すごい勢いでレンタカー屋に電話をかけた
「うちは金もあるし、払う気もある。それやのにあんたの会社は文句ぬかすんか?」
「どないなっとんねんお前の会社は? 出るとこでよか?」
あまりの横柄さと勢いに相手は電話向こうで平謝りしている様子だ。
車は用事でその時使っていたようだが、その日の夕方までに返しておくと約束してくれた
私は自分が早とちりしたことを詫びて家に帰った

ところが、

それからまた1週間後にトヨタレンタカーから電話があった。車は戻されていなかった。 料金はその時すでに12万円を越えていた

「ブチッ」 自分の中で何かが切れる音がした。

自分でも驚くほど血走った目で事務所に殴りこんだ。ところが、人民兵はそこで意外なシーンに遭遇した。

部屋の中では男女数人にリンチされている女タコ社長の姿があった。
髪の毛をつかまれ部屋中引き回されている。

「あのガキ殺したる」くらいの勢いでいったのに、それを見た瞬間
「暴力はいけません。皆さん落ち着いてください」と叫んでいた。

いつもの横柄さはどこへやら、大人しくなった女タコ社長を前に各々は誰からともなく自分の状況を語り始めた。

家出少年二人は、月給100万といわれて2ヶ月働いているのに、びた一文もらったことがないと言った。
それどころか、「細かいものがないから」「ちょっと出しといて」などと言われて、
数十万あった金を全部使われてしまったという。

家出少女は、自分が電話してとった売春の半額を取られたのが理解できないという。
それに、家出少年とつきあっていることが女タコ社長にばれて、迷惑料として「50万払います」という意味のわからない誓約書を書かされていた。

30代と思われる女性は、昔からの知り合いで、数年前水商売をしていたときの給料100万円くらいを騙し取られたらしい。

その隣にいた大人しそうな兄さんはビラ撒きの時給2000円をもらいに来たと言った。

そしてレンタカー代12万円の私

彼女を痛めつけてもしかたないので、とりあえず金庫にある2000万を出すように言うと、

「それはこの前知り合いに送った」
「金は銀行にある。通帳はいまはない」
「手袋のビジネスは先月やめたから金は入ってこない」
「宮崎のホテルは叔父が管理している、電話番号は教えられない」
などなど何を言っても埒があかなかった。

「とりあえず、彼のレンタカーを返してあげよう」と30代の女性が言ってくれたので、 女タコ社長と二人で車に乗り込んだ。

彼女は途中で逃亡を試みたが、人民兵がリンゴすら握りつぶさんばかりの力で腕をねじりあげると大人しくなった。

なんとか無事にレンタカー屋まで来て事情を説明し、彼女が私の借金を肩代わりするという誓約書を書かせた

大人しく判をついている女タコ社長を横目に安堵した私は
「もうこれで僕の借金はないんですね?」と責任者に確認すると
「いいえ、田岡さんが払わない場合は免許証に名前のある方、つまりこの場合は森本さん(人民兵)に全額の債務が行きます」と言われた。

ショックだったが、幸い女タコ社長は書類作成に気を取られて聞いていなかったようなので助かった。
ところが、レンタカー屋を一歩でたところで彼女はこう言い放った
「うちは払わんからな。あれあんたの借金やで 聞いてたやろ?」

あの瞬間田岡の首を絞めていなかったのを考えると、私はかなり気の長い人間なのかもしれない。
ただ、目の前が真っ暗になった気がして、もう何も喋る気力が沸かなかった。

事務所に戻ったあと、我々は「被害者の会」を設立し、女タコ社長を警察まで引っ立てていった。
警察もそれなりに相談にのってくれたようだが、最後は案の定「民事」の一言でお茶を濁されてしまった。

疲れ果てて家に帰ったのは日付が変わってからだった。


*女タコ社長リンチに遭うの図
止めてください!! タオカをしばかないで下さい!! 止めてください!! タオカをしばかないで下さい!! 止めてください!! タオカをしばかないで下さい!!

人民兵のリベンジ

その晩は悔しくて眠れず、翌日の朝に事務所に行ってみた。
すると、鍵が取り替えられており、玄関には大家から立ち退きの張り紙がしてあった
どうやら家賃もかなり滞納していたらしい。

このままでは、もう二度と女タコ社長、田岡真由美にあうことができないかもしれない。

そこで、人民兵はない知恵を振り絞って考えた。
そして、次のようなメモを残した。

いわく、私の親父は某大手予備校の経営者で、母親と離婚した後も私と連絡をとっており、 私のことを密かに後継者として考えている。つまり主席さまにとっての金正日総書記のようなものだ。

私が頼めば現金で数百万ならいつでも動かせる。倫理観に厳しいが、面倒見がよい、などなど。

正直、こんなばかげたことに何も期待していなかった。
ただ、このまま何もせず、いわれのない借金を背負うのだけは嫌だった。

ところが、世の中というのはまことに不思議なもので、溺れるものは藁をもつかむというのか、 その晩に女タコ社長から電話があった。

昨日の威勢よさはどこへやら
「もりもっちゃん。お父さんに頼んでもらえへんやろか?」とやけに低姿勢である。

次の日に会う約束をして、友人のS君に電話をして人民兵の父を演じてくれるように頼んだ。
ちなみにこのS君は、旅の途中モンゴルからオオカミの毛皮を送りつけたりして迷惑をかけた男である。

直接会うと嘘がばれるので、私を介して電話でだけ話せるようにしておいた。

果たして次の日に約束の場所に田岡真由美はやってきた。
「ごめんな、もりもっちゃん。大丈夫かな? お父さんお金貸してくれるやろか?」と弱気な女タコ社長に
「大丈夫ですよ。俺の口添えさえあれば」と勇気付けた。

ただ、礼儀にうるさい人なのでくれぐれも失礼のないようにとだけは言っておいた。
そして予め決められていた時間に友人宅に電話を掛けた。

しばし「親子の会話」をした後、私は神妙に女タコ社長に金を融資してあげて欲しいと頼んだ。

すると、「父親」は打ち合わせどおりその人の「座右の銘」はなんだと聞いてきた。
田岡は「ザユウノメイって何?」と素で聞いてきたので、
「なんちゅうか、社長の大切にしている言葉です」と言うと
「恋する女はきれいさ」だかなんだかわけのわからないことを言った。

いくら必要だと聞かれて、女タコ社長は200万あれば倍にして返しますと言った。

話が佳境に入ってきたところで、
お前が信用できる人間だったら融資してもいい、ただ、その人はお前に借金をしてるんじゃないのか?」 と流石に「親父」だけあってもっともなことを言った。

「そのことをどう思っているのか?」と。

田岡真由美がその時に言ったことを私は一生忘れないだろう
「融資さえしてもらったら、お子さん(人民兵)に借りているお金は真っ先に返します」
私は心のなかで叫んだ 「順番が逆やろがい!!」

結局、12万もって来た時点で田岡を信用して300万融資するということで話は終わった。
土曜日までにお金を作るといった女タコ社長は、
「もりもっちゃん、ありがとう ありがとう」と何度も繰り返した。

金曜の深夜に電話が掛かってきた。
お金がなんとかなったから来て欲しいという。場所は何故か新大阪の高級ホテルだった。

夜中の1時過ぎにホテルの外で待ち合わせしたが、約束に反して彼女は7万円そこそこしか金を持っていなかった

「親切な水商売をやってるお姉さん」が憐れんでくれて、金を貸してくれたらしい。
どうせそっちも騙しているんだろが、それは人民兵には関係ないことでござる。

田岡はお金が不足していることを詫びて、なんとか融資して欲しいとすがるように頼んだ。

「社長の気持ちはよく分かりました。これから俺は親父と勝負してきます。 このお金を見ても社長を信用しないような親なら、縁を切ります。待っててください」とだけ言い残して、
私は彼女の財布から○百○十○円まで全て抜き取った

そのまま家に戻り、朝一にトヨタレンタカーに行って、事情を説明して巻き上げてきた金7万幾らかを返した。

その後、私の借金がどうなったかは知らないが、状況を考慮して焦げ付きで処理してくれたようだ。

田岡真由美(仮名)がその後どうなったのか知らない。刑務所に入っていた組関係の旦那が出てきたのか、 広域暴力団の幹部だという実家に戻ったのか、誰かにリンチされているのか・・・ もはやどうでもいいことだ。

ただ、私の払った1万円の入会金は帰ってこない。私は長い間それを心苦しく思っていた。
仲のいい友人にもこの話はほとんどしたことがなかった。まさに自分の恥部だと思っていたのだ。
ところが最近になって考えが変わった。私はとても貴重な体験をさせてもらったのだと。
どこにでも転がっている話ではないし、田岡真由美と知り合ってから私はかなり楽しませてもらったようにも思う。

ここで、人民兵が何を言いたいかというと、世の中にはいろんなお金の使い道がある、 ということだ。私が使った1万円は生き金だと信じて生きていこうと思っている。




 







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初版:2001年11月31日、