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世界は主体(チュチェ)思想塔を中心に回っている

北朝鮮旅日記
〜続続続々編〜
よくよく写真を見ると、朝鮮半島はすでに北側によって統一されてるんですねー





☆平壌のサーカス〜走っている白馬の上で〜



☆最後の晩餐〜焼肉パーティをしました〜











平壌に戻る・・・

板門店の見学を終えて、車は一路平壌を目指した。
途中、道路際の崖がかなり崩れていて、人民が百人くらいかり出されていた
機械を一切使わない(使えない)徹底した人海戦術のバケツリレー は見応えがあった。

写真下: かり出された人民が素手で土木作業 将軍様のためなら、えーんやこーら




サーカスに行った・・・

平壌では世界的にも有名なサーカスを見物した。これは大変面白かった。
この旅の最初に行ったモスクワのボリショイ・サーカス、
ビックリ人間でお馴染みの上海雑技団。

あと余談だがアメリカで見たサルチンバンコ(これが一番ダメだった)
そのどれと比べても北朝鮮のサーカスは全くひけをとらなかった。 旅の途中に見たサーカスの話はこちら  

北朝鮮のサーカスは全て一級品だった  

ガンダム アムロ行きます!! (*右の写真 平壌のサーカス、暗くて見づらくてごめんなさい)

北朝鮮のサーカスは構成も舞台も役者も最高だった。段取りのよさも群を抜いている。

たとえばこんな感じだ。
あるシーンで、ピエロ役の二人が円形の舞台で帽子の取り合いを演じていた。
その時密かに、数十メートルの高さがある天井に二つの穴が開き、華麗な衣装を身に纏った男女がそれぞれブランコにまたがって音もなく下りてくる。

二人のピエロが退場してゆくのと同時に、場内の灯りが落とされ、色とりどりのスポットを浴びた幻想的な空中ブランコが始まる。 そして、下の舞台では既に、熊さんが乗るための自転車の用意がはじまっている・・・こういった感じだ

更に、当然のことながらそのプロパガンダも素晴らしい。 

ある出し物では、直径10メートル位のサーカスリンクを馬が走っていた。
馬上での逆立ちなど、一応の前座が終わると、次は2頭の白馬が平行に、リンクの中を円を描いて走り始めた

と、舞台のそでから2人の男が駆けてきて、走っている馬に一回転して飛び乗った 。手綱もなしに馬上に立つ、そのバランス感覚に見とれていると、また二人の男が走ってきた。
あろうことか彼等は、”走っている馬上に立っている男”に近寄ると、ポンポンっと飛び乗り、あっという間に肩車されてしまった。

馬の体高の上に男が立ち、その男がさらにもう一人肩車しているのだから、その光景は見るからに不安定だ。

「こりゃすごい!!」 感動して拍手しようとして手を止めた 。また一人の男が、彼の背丈と同じくらいの棒を小脇に抱えて走って来るではないか。

次に見たものは、私の表現力を遙かに越えていた。
馬に駆け寄った男は、トントントンっと2頭の馬の上に駆け上がり、
肩車されている男達の肩にそれぞれ足をのせて、仁王立ちになった。

つまり分かりにくく言うと、 走っている2頭の馬に、それぞれ立っている男達の上に、それぞれ肩車された男達の肩に一方ずつ足をかけて、一人の男が立っているのである

私は興奮を通り越して「おーーー!!!」と叫んでしまった。
そして、そこで男は小脇に抱えた棒を振りかざした。

”ジャカジャーン ジャジャジャーン” 

勇ましい音楽が鳴り響いた。

男の手にした棒からは、真っ赤な朝鮮労働党の旗がなびき、左右のスクリーンにはハングル文字が大きく映し出された
まわりの北朝鮮人民は

「ええぞーーーっ!!!」

「ハラショーーーっっ!!!」

といった感じに、声を上げて大熱狂している。
私は隣の金さんに、そおっと尋ねた

「あの文字はなんと書いてあるんですか?」

「はい、”社会主義をすすめよう”です。」

「・・・ありがとうございました・・・」

他にも、様々な出し物の中で 大業が決まると、音楽が鳴り響き、ハングル文字が映され、人民が沸いた。

中でも人民兵が感動したのは、若い男前のジャグラーで、彼はバドミントンのラケット7〜8本(あまりに早すぎて数えられなかった)を同時にお手玉していた。

そしてそんな大技がきまる度に映し出されるハングル文字の意味をガイドに訊ねた。

「今のはなんですか?」

「はい”忠義孝生”です」

「・・・ありがとうございました・・・」

「今のは?」 

「前へ進もう」

「・・・ありがとうございます・・・」

「今の?」

「強大国建設を!!」

「・・・ありがとうございました・・・」

「今のは?」 

 「”自力更正”です」

「・・・ありがとうございました・・・」

自分でもなぜだか分からないが、金さんの説明を聞いて、ひたすら私はありがとうを言い続けた

ある場面では、シーソーを使った軽業を披露していた。
片側のシーソーに、弾みをつけた人が飛び乗り、もう片側の人が反動で宙に舞う。

アクロバチックな前座が終わると、一人の男がくるくると宙返りして、土台として立っていた男の肩の上に”着地”した。
「凄いな」と思ってみていると、次の男が何度も弾みをつけた後、一回転してそのまた肩の上に”着地”した。
支えがあっても難しいだろうに、人の肩の上に人が立ち、その肩の上に人が立っているという「3人立ち」の状態になった。
拍手をしようと身構えると、まだ一人弾みをつけている奴がいた。

まさか垂直に4人立つわけもないので、新たな「オチ」を期待した。
そして何度も大きく弾んだ後に、宙高く舞い上がった彼が着地したのは、3人目の肩の上だった
垂直に4人・・・ 命綱もなしで・・・ 

「ええぞーーーーっ!!!」 

「オブリガーーーード!!!!」 

いっそう大きな人民の喚声が、緊迫した会場に拡がった。
音楽が鳴り響き、巨大なハングル文字。

「今のは なんて書いてあるんですか?」

「はい、”革命的軍人精神で”」

「・・・どうもありがとうございました・・・」


手を叩きながら私は、
「”革命的軍人精神”には金正日体制を倒すことは含まれないのだろうか?」
とずっと考えていた。

そして素晴らしいサーカスが終わった。
約2時間があっという間に過ぎた。

北朝鮮国旗、朝鮮労働党旗を先頭に、団員全員が舞台に並んで頭を下げた。
これも国家公務員だ。団長の挨拶に、手が痛くなるほど拍手した。

場内がライトアップされ、観客が席を立ちだした。
私は興奮して農沢君に話しかけた。



宴の後に・・・
 

「ロシアのボリショイサーカスも素晴らしかったけど、ここのも素晴らしいね。
一長一短はあるけど、甲乙付けがたいぐらい。あのジャグラーは世界一じゃないか?・・・」
「ホント良かったですね・・・」
「ところで・・・」 

その時何か急に違和感を覚えた。理由はすぐに分かった。
数百人から千人の単位でそこにいた観客の中で、 声を出しているのは我々二人だけだった

周囲を見回したが誰も話していない。それどころか足音すら立てていない。静かな客は、全員伏し目がちにひっそりと歩いていた。

内部の広さの割に狭い非常口、そこを誰も押し合うことなく、話すことなく、顔を上げることもなく、蛇口から落ちる水が流し口に吸い込まれてゆくかの如く、ひっそりと消えていった

私が北朝鮮で人民の声を聞いたのは、このサーカスでだけだった。
そして人民が熱狂する姿も。


心にどんよりとしたものが拡がってゆくのを感じた
恐らく”彼等”は今、夢から覚めたのではないか?国が与えてくれた最高の夢から。

決定的な食糧不足、徹底した思想教育、情報操作と恐怖政治 そして現実達。
きっと”彼等”は巨大な建築を見て、数十万人のパレードを見て、その結果国力が疲弊していることは感じているだろう。
ただ、それは同時に「夢」でもある。この国はどんなに嘘をついてでも「夢」を与えることにこだわり続けてきたのではないだろうか。どんな形にせよ「夢」があるから「現実」に耐えられるんじゃないか? そんな気がした。

あの素晴らしいサーカスを見終えた後に”彼等”が見せた無機質な瞳を私は一生忘れまい。 

この国が「夢」などという甘いレベルの狂気で語れないのは先刻承知の上だ。
ただ私は、この「クーデターを起こす自由すらない国」に今までも、そしてこれからも魅かれてゆくだろう。 

ニュアンス的に、伝えるのがかなり難しいが 私はこの国でたくさんの恐怖を感じた。
ただ、それでもこの国を大好きなのは、この異常な空間の中でも笑って生きようとするたくさんの名もない人達をこの目でみてきたからだ。

きっと、もう2度と会うこともないだろう彼等の幸せを心から祈っている。

 




   







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初版:2001年11月31日、