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関空の税関で2万円もらえるの?



約半年の旅を終えて日本に帰ってきた人民兵 時は1999年春。 ソウル発アシアナ航空関西空港行きの機体が高度を下げはじめ、 意味もなく溢れる涙を抑え切れなかった不肖 この人民兵。

「はずかしながら帰って参りました」

ところが入国審査で思わぬトラブルに巻き込まれてしまった。 転んでもただでは起きぬと 騒動のさ中にも、かねてから日本人旅行者のなかでまことしやかに流れていた噂の真相を探ってみた。  題して


「2万円のタクシーチケットってホントですか?」





日本に帰ってきた、、、、


ソウルからたった1時間強のフライト。それまでアエロフロート(旧ロシア国営航空) と中国東方航空(北京発平壌行き)しか搭乗したことのなかった人民兵は 初めて"テキパキと気持ちの良いサービスをしてくれるスチュワーデス"に感激して気圧のせいか、興奮のせいか 2本目のビールを真っ赤な顔で 飲み干したところだった。

そういえば約半年前、生まれて初めて乗った飛行機。モスクワ行きの アエロフロートの中でエリツィン大統領にそっくりの巨漢スチュワーデスに ギョロリと睨まれたことを思い出す。せっかくだからウォッカでも飲もうと思って

「トマトジュース アンド ウォッカ プリーズ」

とおそるおそる頼んだ 私に一瞥をくれたあと"トマトジュースと水(ウォーター)"を運んできたのは 彼女だった。

「ウォーター ノー ウォッカ プリーズ」 などと 言えるはずもなく、だぶだぶの腹に流し込んだ。そもそも日本で生まれ育った私は、 スチュワーデスというのは 堀ちえみ のような 女性がなるものだとばかり思っていたので、この時は軽い先制パンチを食った格好になった。

「ビーフ オア チキン?」待ちに待った夕飯がやってきた。 江戸の仇を長崎で討たんと身構えている 人民兵の前に現れたスチュワーデスはゴルバチョフ書記長そっくりだった。額のシミまで ある。さほどのことには動じない人民兵もしばらくあいた口が塞がらなかった。

「チキンプリーズ」とはっきり言ったにも拘わらず、私の前には薄っぺらいステーキが置かれた。 文句を言おうかと思ったが、彼女等は明らかに 堀ちえみ ではないし、私も 風間杜夫 ではないので黙って硬い肉を頬張った。 そんな懐かしいあの夏の日。

ともあれ、ほどなく陸地が見えてきた。「・・・ ・・・・」
自分でも全く予期しなかった感動が急にこみ上げてきた。
生まれ故郷の お お さ か という言葉が頭によぎった時、 涙が自然に溢れだした。「これで 旅もおわった」



感傷もそこそこに・・・


ターンテーブルから流れてきた荷物を取って税関に向かう。 隣国の韓国からの便だったこともあって、東南アジアで日焼けしたザック姿の私は 周囲とは少し異なる周波数を醸し出していたようだ。

税関の若い役人が

「へー どこいってたん? 楽しかった?」と聴いてきた。 アジアンスマイルを目一杯効かせて、この半年をかいつまんで説明した。

「へー そうか・・・・ ちょっと別室に来てもらえるかな?

ラオス、タイ、カンボジア、ベトナム・・・と来たところで彼の目が光った 様な気がしたが、 やはりそうなのか。 ワタシ ウタガワレテルノデスカ?  まあいいや、ちょっと確認したいこともあったし

「任意ですね?」 とその確認だけしてついていった。



こんな噂を聴いたことがあった・・・

「関空には麻薬犬がようさんおるんや、 ほいでな、東南アジアから帰ってくる前にみんな 自分のザックに ハッパを吸って よーけ 吹きこんどくんや。ほたら関空でな、犬がぴったり 自分の横につきよんねん。

"すいませんけど別室に"ゆーて連れていかれても なんもでてくる筈ないわな。1時間以上あちゃこちゃ調べられてから こういうんや 

「困りまんな、わいかて大事な時間。どないしてくれまんね」

向こうは すんまへん、今回はこれで・・・ゆうて20000円のタクシー券 くれよる。それを金券やに持っていったら、9割でひきとってくれよる。 まあ、割のええバイトや・・・」

コカイン、ヘロインからバイアグラにいたるまで、ドラッグ などには手をだしたことがなかった。 マリファナなどは付き合いで 数回吸引したことが あるが、人民兵には将軍様の愛があればドラッグなど不必要なのである。  ま、とにかく「はっぱも吹き込んでもないのに、 こら向こうから幸運が舞いこんできよった」  などと考えて、にやにやしながら検査を受ける。

「半年ぶりの日本、やりたいこともたくさんあるし、友人に迎えに来て もらってるんです。なるべく早くして下さい。」そうプレッシャーをかけた。 ところが意外なことに、横柄な態度の若い検査官は3分もしないうちに 荷物の検査をやめた。「おれの勘では、こん中にはないな・・・ ポケットのもんだしてくれるか?」

少し迷った。まずこのままでは10分以内に終わってしまう。一時間2万円のバイトなのに このままでは

20000 * 1 / 6 = 3333円 位にしかならないではないか!!(単純)
 

それよりも何よりも、明らかにこちらを"くろ" と決めてかかっている 捜査官と彼の横柄な口振りにカチンときた。 このまま終わらせてたまるか  

「お断りいたします。」はっきりと断ってしまった。 「これ以上の検査は時間の無駄 、不当拘束だ・・・それより友人に遅れを謝る義務があるから会いにゆく ・・・」と。 そう伝えたとき、検査官の目が再びキラリと光った。

「こいつのポケットや、迎えに来た奴がぐるや」

明らかにその目はそういっていた。 あとで友人に聞いたところでは、感じの悪い検査官が身分も言わないまま、尋問とも思える内容のことを 根ほり葉ほり聞いてきたそうだ。

「あ、**君? もう わかってるよね。」

「え? はい? 何がですか?」 (見知らぬ男にいきなり声をかけられ戸惑う友人)

「友達のことやけど、ちょっと時間かかると思うから」

「あ、人民兵のことですか?」

「そう。 じゃ、そういうことやから」

それだけ言って歩き出した彼は五歩先で踵を返してこちらを見た後こういったそうだ。



「令状、 とるかもしれんから」



後述するが、彼には手紙をタイプさせたり、モンゴルから狼の毛皮を送りつけたり、色々迷惑をかけた。(神戸税関や、動物検疫所から "ワシントン条約に関する物品が届いています"・・・などといった連絡が逐一入り、彼ら相手に

「狼ではないと思います。」


などと言って孤軍奮闘たたかったらしい) ・・・狼の毛皮の話はこっち ・・・

この場を借りてお礼を言いたい。

結局2時間の"拘束"の後

     
  • 彼らが許可しないと如何なる物品も日本に持ち込めないこと
  • 捜査令状がなければ、私の体にも荷物にも指一本ふれる権利のないこと
  • 彼らが持つのは 荷物に対する権限のみで、私の体を止める権利はないこと
を確認した後、わざといらない靴と服だけをさわらせないで 段ボール箱に封印させた後、身軽になって帰ってきた。 ほどなく、「何も異常ありませんでした。」の電話とともにそれらが 料金受取人払いで送られてきた。受け取りを辞退して後 延べ10時間にも及ぶ電話交渉の結果 余分に払った駐車場料金はおろか、図書券一枚送られてくることはなかった。




で、人民兵が何を言いたいかというと・・・


税関も入国管理も検疫所も忙しい。2万円もらうのは無理だから  決して意味のない抵抗などしないように。 そんな時間があれば 魁男塾の全巻でも読み直して ほしいということだ。









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初版:2001年11月31日、